−別れ−   蝉時雨 白百合と共に 逝きし父
 大動脈瘤破裂によるショック死。それは突然の出来事でした。
 7月に入り異例の蒸し暑さに、健常な者でも参る日々が続き、父は食欲が落ち眼に見えて痩せてゆきました。心配になった私は近くの病院に連れて行き診察を受けましたが、高齢で心不全もあり栄養点滴も難しいので、胃薬で様子を見るように言われ、2日ほど飲みましたら少し食欲が戻りホッとしました。
 8月−2日(水)の定期健診で主治医に食欲不振で胃薬を服用している旨お話しました。体重測定があり45Kまで落ち込んでいたので、16日に胃カメラの検査をするように指示を受けました。
 4・5日(金・土) 何ヶ月ぶりかで『ナイロンザイル事件』の本の編集会議が鈴鹿の自宅で有り、本を書いて下さっている元朝日新聞記者の相田さんと、出版社の川角さんがいらっしゃいました。父は大変喜び、数時間でしたが会議にも出席してご質問に答えていました。本は10月中には出版の運びになる。との事で、お二人がお帰りになってから、「本を見るまでは死ねんでな〜」と言うので、私は「お父さん、本が出来たら抱いて寝るんだよね〜」と冗談を言い、二人で笑いました。
 13日(日) 今年は鈴鹿の庭に、例年になく白百合が沢山花を着けました。咲き出した見事な百合を、早朝、あちこちに生けてみました。父は日中、高校野球を観戦したりお昼寝したり・・・いつものように過していましたが、夜10時頃から腹痛を訴え、ひどい下痢でしたが、お腹を暖めているうちに11時過ぎには痛みも治まり、休みました。
 14日(月) 朝、4時頃様子を見に行ってみると嘔吐していて、ほとんど出るものも無いのに吐き気があり、うがいをしたりしていましたが、6時過ぎから胸が痛いと言い出し、心臓発作用にいただいていたニトロを舌下しましたが治らず、30分経ってもう一錠舌下しましたが結果は同じでした。7時過ぎ第一日赤の循環器の主治医に電話して病状を伝えましたら「すぐ救急車を手配して連れて来なさい」と言われ119番に電話しました。昨年12月から3度目の緊急入院でした。次の入院の為に用意しておいた品を積んで、私は自家用車で後を追いました。日赤の救急センタ−で診察の結果、心不全は異常なく、「もう少し様子を見なければ判りませんが、大した事は無いようです。ご自宅が遠いので今日は入院していただきます」との事。一安心でした。
 翌15日 朝8時過ぎ、朝食が運ばれてきましたが、「食べたくない」と言うので「牛乳だけでもどう?お父さん」と言うと「うん、飲む」との事だったので、暖めてお砂糖をいつもより多く二つ入れて勧めました。「美味いナ〜」と言って飲み干し、横になり少ししてから、咳をして・・・突然「痛い!痛い!摩ってくれ」と言い胃の後ろあたりに手を持って行きました。私はすぐに摩って、いつものように「シップ貼ろうか?」と言い貼りました。それからすぐ今度は心臓の裏の背中の辺りが痛いと言い、また摩ってシップを貼って・・・「どう?」「少し良い」治まったようで、眠りに就くようだったので、牛乳カップの洗物の続きをして、フト振り返ると、頬がフツフツと細かく震えていました。変な眠り方だな。と思ってよく視ると眼を開いているので、駆け寄って「お父さん!お父さん!!」と揺すりながら呼びかけましたが返事がなく、慌ててナ−スコ−ルで看護師さんを呼びました。看護師さんが「石岡さん!石岡さん!!」と呼びかけているうちに、大きく一つ息を吐きました。次の看護師さんがいらっしゃり心臓マッサ−ジが始まりました。お医者様も掛け付けてみえました。「姉に連絡した方が良いでしょうか?」「すぐしてください。他のお身内の方にも!」姉にだけ連絡して病室に戻りましたが入る事を許されず、絶望の中、一人廊下を行ったり来たり。9時過ぎ担当医に呼ばれ「手を施しましたが、残念でした。確認してください」と言われ呼びかけ揺すりましたが返事がなく・・・「9時7分でした。ご愁傷様です」  苦しみ出してから意識が無くなるまでほんの数分だったと思います。呆気ない死の訪れでした。念願の苦しみの少ない死の訪れでもありました。痩せ衰えて二周り程小さくなった父の亡骸は、夕方鈴鹿の自宅に帰りました。台風がらみの風が吹き抜けていました。
 16日 夕7時から通夜
 17日 午後12時30分から告別式
 大勢の山の仲間・教え子の皆さん・知人の方々が送ってくださいました。本当に暑い中、有難う御座いました。また、このHPのゲストブックにも、沢山の方々からお悔やみのメ−ルをいただき感謝しています。一つ一つのお言葉に、まだまだ涙が滲んで・・・もう少し元気になったら、またHPの完成に取り掛かります。その時は応援してくださいね。宜しくお願いします。本当に有難う御座いました。
                                                                   初七日を前に                                         石岡 あづみ